EPSON PX-5500待望の後継機PX-5600発表で言いたい放題
お猿@おはようございます。
前回も書いたことですが、完全にブログ更新のペースがガタ落ちしています。船場吉兆は廃業することになったそうですが、当ブログは更新ペースが落ちても廃業する意思はございません!まあ、何といいましょうか。当ブログの性質上、記事一つにかかる手間がバカにならないものがありまして、ちょっとまとまった時間がないと素材集め段階でつまづきますので停滞しやすいんですね。記事にしたいネタそのものはGW関連も含めて、これからの梅雨で腐るほどあるのですが、なかなか記事にできずにヤキモキしています。
これからの記事、ちょっと古いネタになるかもしれませんが……、
他の客に出したネタを使いまわすことはしないので、
これからもご贔屓にお願いいたしヤス。
……ということで、毎度長い前口上はこれくらいにして本題に入っていきたいと思うのですが、GWネタをバババッとやっていきたいと思いきや、一昨日の5月26日にEPSONの新インクジェットプリンタが発表になったと聞きましたので、そのネタを一つ……。
今まで当ブログでは、カメラやレンズなど、お猿の入力側、つまり、インプットな話題ばかりを提供してきました。そういえば、出力側、つまり、アウトプットな話題を全くしていなかったな……と思いまして、このニュースは、そんな話題をするキッカケになるなとも思った次第であります。
家にはキッチンがあるからにはトイレがあるように、写真は入力から出力まであって完結するわけです。いずれは、出力側のこともネタにせねばなるまいと思っていたわけですが、思いもよらず早まってしまいました。
それで、お猿の出力側の環境と言えば……、部屋の隅っこにあるコレであります。
お猿の部屋の片隅にある和テイストで怪しげなオブジェ
とてもプリンタカバーなんて買うお金がないので、いつもは日本の誇る便利なアイテム「ザ・風呂敷」に包まれているのですが、この中はコレが入っています。
実は作品作りに、プロ御用達のA3ノビ対応顔料プリンタ「PX-5500」があったりするのです!
そう、EPSONの誇るプロユース用でA3ノビ対応のMAXARTシリーズ「PX-5500」です。発売以来2年以上経っているのに、根強い人気のある名機であります。お猿は当初、ややコンシューマ向けの「PX-G5300
」にしようかと悩んだ時期もありましたが、最終的にグレーインクの存在などでPX-5500にした経緯があります。
今年のPIE2008のEPSONブースにてPX-G5300が大々的にPRされていた中、担当者に「PX-5500の後継機は、ボチボチ出ますかねぇ?」と、知っていてもどうせ答えられんだろうと思われる質問をぶつけたお猿ですが、その時は「まぁ、開発はやっているのは間違いないでしょうけど、そういう話は聞いていません」と予想通りの答えが返ってきた。その僅か2ヵ月後に出た答えがコレだ。
プロが認めるプリント品質をめざした「エプソンプロセレクション」シリーズ
「VM(ビビッドマゼンタ)インクテクノロジー」搭載で色域拡大を実現
■A3ノビ対応インクジェットプリンタ『PX-5600』新発売
……と、アッサリとPX-5500の後継機になるPX-5600を発表してきたのだ。発売時期はまだまだ先どころか、目の前の6月5日だそうな。
嗚呼、腹立たしい……。
いやぁ~、こういう発表ってPIEみたいなところで発表しなくてどうすんのっ!と言いたいが、まあやっちまったことは仕方がない。ぱぱっとPX-5500とPX-5600についてクドクドやってみたいと思う。
まず、お猿がPX-5500を選択した理由は、顔料インクということ。
様々な業種からフォトグラファーになる人がいる中、お猿はDTPオペレーター出身である。その中でも、フォトレタッチがメインとなっていた。DTPをやるからには、CMYK4色によるオフセット印刷が最終目標であり、オフセット印刷のインクと言えば顔料インクなのだ。そうなると、染料インクよりも馴染みのある顔料インクに軍配があがる。まあ、それ以外の理由もあるのだが……。
それから、次の理由がインク構成が基本的なCMYKベースであるということ。CMYKならば4色積んでいるべきだが、PX-5500は8色構成になっている。8色と言っても、
- C要素…LC(ライトシアン)、C(シアン)
- M要素…LM(ライトマゼンタ)、M(マゼンタ)
- Y要素…Y(イエロー)
- K要素…LGY(ライトグレー)、GY(グレー)、BK(ブラック)
……ということで基本構成は、あくまでCMYKだ。いくらCMYKプリンタだのRGBプリンタだの、AdobeRGB対応だのと言ったところで、白い紙にインクを持って着色をした段階で減法混色に頼ることになる。そうなると、純粋にRGBの補色であるCMYを用いた印刷がシンプルで扱いやすい。
8つのインクカートリッジをセットする。フォトブラックとマットブラックの同時装填が望まれる
ちなみに、PX-G5300も顔料インク使用でA3ノビプリンタなのだが、同じ8つのインクタンクを搭載していながら、インク構成が全く異なる。
- C要素…C(シアン)
- M要素…M(マゼンタ)
- Y要素…Y(イエロー)
- K要素…BK(ブラック)
- その他の色要素…R(レッド)、O(オレンジ)
- 特殊インク…GO(グロスオプティマイザ)
……となっている。最後のグロスオプティマイザは光沢のためだけに存在するので、無色であり、色は構成していない。そうなると、実質は7色となる。ただし、C要素とM要素がPX-5500はライト寄りにLCとLMをそれぞれに用意しているのに対し、PX-G5300は1色だけであり、K要素に至っては、PX-5500はLGYとGYも加えた3色構成になっているのに対し、PX-G5300はKのみである。その代わり、PX-G5300はRGBのR領域を伸ばす為か、ストレートにRインクとOインクを用意しているのが大きな違い。
オフセット印刷で言えば、ヘキサクローム印刷に近いものがある。逆にPX-5500はCMYそれぞれのチャンネルの階調の繋がりを重視してかライトインクを用意して、あくまでCMYK印刷にこだわっている。ただ、感服するのがグレーインクの存在だった。
PX-5500のレビュー記事などで、グレーインクの存在と言えばモノクロ印刷のグレーの安定性がことさら述べられているが、DTP業界の印刷屋の観点から言えば、むしろカラー印刷の安定性にこそ貢献していると言ってもいいと思う。
通常なら、光の三原色と言えばRGBで加法混色とも言って、それぞれの要素を加えれば加えるほど白くなっていく。反対に色の三原色と言えばCMYで減法混色とも言って、それぞれの要素を加えれば加えるほど濁っていき最終的には黒くなる。ならば、CMYだけでいいはずなのに、あくまでオフセット印刷の現場ではCMYKなのだ。
というのも、CMYが減法混色という様に、光のある要素を吸収して反射した色が見えるという仕組みなだけに、完全な反射と吸収をしなければならないのだが、実際のインクではそんな理想的な反射と吸収はしてくれない。余計な反射をしたり、余分に吸収したりして、CMYそれぞれのインクが微妙に色転びが起きてしまう。したがって、CMYを等値でかけ合せれば完全なる無彩色、つまり、グレーになるはずなのだが、どこかしら赤カブリやら青カブリといった色転びが起きてしまう。
そこで、完全なグレーたるKインクも加えて、特に黒い箇所を極力グレーに近づけているのだが、PX-5500の思想はオフセット印刷でのGCRとかUCRと言った技術と全くと言っていいほど同じものだと思うのだ。つまり、無彩色ではないのだけれど、「C=50%、M=20%、Y=50%」なんていう組成の色があった場合、少々濁り気味の緑となる。これなら、単純に「C=50%、M=20%、Y=50%」のインクを出せばいいと思うが、機械やインクには誤差というものがあって、10枚刷ったら10枚全部微妙に色が転ぶのだ。中にはCが若干強めにでたものがあるだろうし、Mが強めにでるものがあるかもしれない。
ならば、CMYが等値ならグレーという理屈なら「C=50%、M=20%、Y=50%」の各色20%は重なるので、これをKに置き換えれば「C=30%、M=0%、Y=30%、K=20%」となる。Kインクは完全無彩色なので、CMY3色を同じ分量出してグレーを作るより、Kのみにでグレーを作ったほうが色が安定するのは当然なことだ。ここに下色を加えることでUCR化することもあるが、LGYインクが存在するためにハイライト部分のグレーも担当できることで、印刷の安定性が確保される。また、グレーをLGYインクに置き換えるため、インク総量が減りカラーインクの節約にもつながる……ハズだ。
これが、PX-G5300なら、カラー写真のハイライト部分はLGYインクがない分、CMYとかROインクの混色で行わなければならないために、色が転びやすい。グレーを作り出すインクが増えれば増えるだけグレーバランスが悪くなるのは当然なことだ。これはモノクロ印刷でも実証されている通りで、これはそのまあカラー印刷になってからもいえることだ。
まあ、この辺のウンチクはいずれ記事にしたいと思うが、なんせPX-5500はモノクロ印刷ばかりクローズアップされて、カラー印刷を好むならPX-G5300なんて言われる方もおられるが、お猿的にはカラー印刷の安定性&自分でカラーマネジメントをしてレタッチすることを思えば、グレーバランスの取りやすいPX-5500はベストチョイスだと思う。ROインクを加えて実質5色印刷やろうと思えば、余程良いカラープロファイルを作らねば、色の繋がりなど良いものが出来る筈がない。
ああ、段々とごちゃごちゃしてきましたね。
まあ、PX-5500のインク組成は満足しているのだが、不満な点が一つあった。それが、ブラックインクにフォトブラックとマットブラックがあるのだが、それらを同時装填できないということ。これはPX-G5300や、A2対応のMAXARTであるPX-5800でも対応しているのだから、きっと後継機には……と期待されたが、残念ながら今回も同時装填は見送られた模様だ。
その代わり、PX-G5800で採用されて、後継機にも期待されたM(マゼンタ)に代わるVM(ビビッドマゼンタ)の採用だ。CMYKでのM要素であるままで高彩度に持っていけるので、プロファイル的にも無理は出ないはずだ。ROインクを足して色域を広げようという考えはどうも好きになれないが、VMインクなら許されると思う。むしろ、これは歓迎だが、これは一体どれ程の効果があるのだろうか?
参考までに、PX-5500のスタンダードのプロファイルを見てみると、こんな感じだ。
黒いラインは可視光領域。そして、白い立体はAdobeRGBの色空間だ。こうやって見てみると、むしろエメラルドグリーン要素が足りないように思われるが、若干ながらレッド~オレンジ要素も足りていないようだ。
ちなみに、お猿が、このPX-5500でプリントする際にはプロ御用達のCRISPIA(クリスピア)を使っている。カメラ雑誌で用紙選びが云々と言っている人が多いが、個人的には光沢紙かマット紙かっていうくらいの差しかない。プリントはあくまでプリンタの色づくりには任せず、あくまでカラーマネジメントを行ったモニタでレタッチをして、それを忠実に出してくれるプリンタであればヨシとしている。その為にも、きっちりとしたプロファイルが必要となってきて、EPSON純正のクリスピア専用のプロファイルが提供されているのは実に心強い。このICCプロファイルに忠実にプリントするというスタイルはDTPオペレーターとしては当然の選択であって、そのスタイルが抜け切らない。そんなワケで信用できるプロファイル&用紙となると光沢紙ではクリスピアとなる。
ちなみに、PX-5500でクリスピアに印刷した際のガモットはこうなる。
同じPX-5500のプロファイルなのだが、スタンダードに比べるとクリスピアは角が取れて、急にガモットが狭くなったかと思うところもあるが、総じてエメラルドグリーン部分がAdobeRGBを突き抜けるほどの元気っぷりだ……が、若干足りない部分もある。また、レッド領域も足りていないのは事実だ。やっぱり、AdobeRGBを完全に網羅するのは至難の業っぽい。
さて、今度のPX-5600はどうなるのだろうか?EPSONのブログから拝借したガモットを見てみると、
……と寒色系は殆ど変わっていないものの、マゼンタ側が格段に伸びている。今回のPX-5600を買うメリットはこの部分を買うかどうかと言ってもいいかもしれない。ちなみに、この角度でPX-5500のAdobeRGB色域に占める割合を見てみると、
……という具合に確かにマゼンタ付近がAdobeRGBに及んでいない。断面で見れないのが残念だが、それでもPX-5600はAdobeRGBのマゼンタ付近にグッと近づいた感がある。流石はVMインクだ。彩度が全く異なる。
ちなみにMインクをVMインクに切り替えることで、総合的に色づくりを考えねばならないので、プロファイルも相応にチューニングされているようだ。ただ、やっぱりプロファイルの出来不出来で階調表現も全く異なってくるので、じっくりと動向を見守っていきたい。
あとは、PX-5600に、CD-Rのレーベル印刷やらピクトブリッジなどが対応したというのがあるらしい。う~ん、店頭予想価格は8万円後半らしいが、今では前機種のPX-5500なら66,000円で手に入る(6月7日の時点で三星カメラでのPX-5600の価格は¥89,000-で2万円以上も高価だ)。VM格調領域を必要とするか。そして、CD-Rレーベル印刷を必要とするか。ピクトブリッジは必要なのか?はてさて、2万円弱の差額を出してPX-5600を買うべきか、PX-5500の値崩れしたところを狙うか?
さあ、皆さんならどうします?
ではでは。
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