越中八尾の「おわら風の盆」を撮る(1)
お猿@おはようございます。
いつの間にやら、常連の方やら通りすがりの方やらに踏みにじられ続けて、お猿ブログも18万ビューを突破しておりました。いや、ホントありがとうございます。これからも何卒、ガンガン踏みにじり続けて頂ければ、お猿としても本望でございますので、是非是非踏みにじっていってくださいね!
そんなワケで、ここんところ、Nikonの某カメラの価格を追い続けてきましたが、気がつけば立山黒部アルペンルートの撮影レポートが途中でしたね。でも、まあ好き放題やっているブログですので、完結しないままで次のレポートに移りたいと思います。気が向けば再び立山レポートをしようと思うので、その時には是非とも遊びに来ていただければ幸いです。
……で、中途半端に何のレポートかと言えば、今が旬の越中富山が全国に誇るイベント「おわら風の盆」の撮影レポートです。そういえば、いつぞやのエンタとかいう番組で、富山県出身のピン芸人“長江もみ”とかいう人が、富山県に関する自虐ネタを披露していたと両親から聞いたのですが、いざYouTubeを見てみると「何もここまで卑屈にならなくても……」というくらいの自虐っぷり。「歴史の教科書で富山県が登場するのは、米騒動くらい。……載らない方が良かったです」と笑いを取っているが、音楽の教科書ならお猿も大好きな「こきりこ節」があるし、これ以外の越中民謡だってステキだ。
んで、今回は教科書には載っていない「おわら節」です。
……いや、何だったんでしょうね?ここまで教科書ネタで引っ張ってきたのは。意味なかったです、ハイ。
まあ、そもそも、お猿が「おわら風の盆」というのを知ったのは、高校時代。高校は寮生活だったのでテレビは先輩が占拠していたので、もっぱらラジオっ子でした。しかも、NHK FMっていう愛国精神たっぷりの高校時代!夜の「ミュージックスクエア」と「サウンド夢工房」の番組は好きでした。その「サウンド夢工房」にて1992年3/9~3/27に放送された「小高恵美の北陸旅紀行」というシリーズがあり、その3回目あたりが八尾の旅だった。そこで「おわら風の盆」という単語を耳にし、「おわら」という意味不明な単語と「風の盆」という風流な単語で一発で覚えた。そして、収録されたおわら節。この哀愁漂う旋律が何とも言えず、カンペキに脳裏に焼きつき、富山に来て再び耳にしたときは感動モノだった。「こきりこ節」の旋律はあやふやな覚えだったが、「おわら節」はカンペキに覚えていた。
……という感じです。
その高校時代から心に残っていた「おわら風の盆」を今年こそは……ということで、計画を練っていた時に、八尾の友人から話を聞いた。
「写真撮りに来るなら、前夜祭においで」
……とのこと。9月1~3日の本番は混雑するので、踊りそのものは本番と変わらないくらいに本格的な前夜祭に来たほうが良いということらしい。そもそも前夜祭は混雑緩和の為に、行われているものらしく、おわら踊りをする11の町(支部とも言うそうな)が日替わりで踊りを披露するというものだ。そういうことで、天気が心配ということもあって行ける時に行こうと先週の土曜日(8/23)に昼から行ってきました!
あ、そうそう。このおわらの撮影に関しては、個人的な撮影願望だけではなく、当ブログによくいらっしゃるcameraman_hideさんの願望でもあります。以前の富山空港の撮影もそうですが、hideさんは富山県に非常に思い入れがおありのようで……、hideさんに喜んでいただきたいという思いもありまして撮ってきました!なんてたって、最新の記事に、
★ hideは、フォトグラファー猿さんに、この夏の「長良川鵜飼いレビュー」を捧げたいと思います。今度は、貴方に「富山の夜の宴」は、お任せましましたよ! (大拍手!)
……とまで書いてくださり、嬉しい次第であります。
さて、今回の撮影の日は、おわら踊りを支える11の支部のうち、「下新町」が披露する日でした。踊りの時間帯は交通規制がなされるので、早めに駐車場を確保して、町を散策。正直、あまり歩いたことがないので、この「歩く」というのが非常に大切です。
駐車場から、八尾の町を見るとこんな感じです。坂の町と言われるように、非常に坂が多く、昔からの町並みです。
川側から見ると、綺麗な石垣が……。
この石垣の道を上って町へ向かいます。別アングルから見ると、
……という感じで、ぼんぼりがまた風情あります。電気式なので電線が邪魔ですが、まあこれは許容値ということで……。さて、今回の撮影の舞台である「下新町」の公民館に足を運んでみることにしましょう。
町内会の皆さんが集まって、夜の踊りに向けて準備を進めておられました。本当にリアル住民です。他の町内会の公民館も見てきましたが、周囲が近代的な建物であっても、公民館だけは情緒ある外観ですね。公民館の前では、皆さんが協力して手際良くぼんぼりの設置を進めていました。
最近は近所付き合いが希薄で「隣は何をする人ぞ?」と言われますが、ここ八尾は全く違いまして、準備にやってきた青年が先に来ていたおじさんに「あ、ごくろうさまでーす!」と笑顔で自然に親しく挨拶をしているのを見て温もりを感じました。老若男女問わず仲がよく、おわらに誇りを持って、おわらを元に団結している印象を受けました。本当に素晴らしいことです。
日が暮れると、ぼんぼりに明かりが灯りだしました。
いやぁ、ネオンのない町にぼんぼりの暖かい光……。風情があります。公民館前では、準備の最終段階です。ぼんぼりに防水のカバーをかけていました。
準備が終る頃、路地に人が集まりだします。
近くにある「聞名寺」という浄土真宗の寺の前も町流しで通りますが、ここは隣町の「今町」のエリアらしい。
町流しの時間が20時から。暗くなるにつれ、おわらに染まっていきます。
公民館前には、大勢のカメラマンが集まっていました。皆さん、縦グリのあるゴツイカメラを手にしています。どういうわけか、某C党が多かったように思います。EOS 1Dシリーズを持っている人が多かったような……?そして、ストロボ撮影用にブラケット使用がゴロゴロいらっしゃいました。
ここで、お猿の装備を紹介。暗闇での手持ち撮影ということに加えて混雑による身動きが取れないということを考慮してのチョイス。本当なら愛用の単焦点レンズ「Ai AF Nikkor 50mm F1.4D」を動員させたかったが、「足で稼ぐ」ということが不可能っぽかったので断念。
○メイン機材
- Nikon D300
(DXフォーマットながらフラッグシップ。高感度だって結構イケル!)
- AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED
(ズーム全域でF2.8通しの大口径に期待!)
- SB-800
(町によってはストロボ禁止があるらしいけど、一応持参)
- SUNPAK Diffuser Kit
(いわゆるディフューザー。ストロボ直当ての必需品)
○サブ機材
- Nikon D80
(愛用の初代デジイチ。軽くて高性能!)
- AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
(安価ながら全域でクリアな描写でお気に入り。圧縮狙いで使用)
……というシンプル装備。結論から言うと、サブは使用する余裕なし。ごった返して、2台持って撮るのが邪魔だった。身軽さ重視でD80はバッグの中へ……。あと、少々レンズが暗めという弱点が痛い。
それで、D300の1本勝負だったのですが、これが中々イケル。ストロボ禁止でなかったので、ワザとらしさが出ないようにディフューザーを使用して勝負。このSUNPAKのディフューザーは以前に「ディフューザーを使ったストロボ撮影」という記事でも書いたように、携帯性にも優れている。今回はストロボはほんのり明るくする程度ということと、僅かに動きを止める目的で使用。その為にこのディフューザーは必須だった。ところが、このディフューザーを装着して、踊り開始を待っていたら、近くにいた写真愛好家らしきおじさんが声をかけてきた。見ればEOS 1D系のゴッツイカメラにブラケットでストロボを装着してスタンバイしている。これは手ごわそうだ。
「すみませんが、それ何ですか?」
……とのこと。「いや、ディフューザーですけど……」と答えると、それまで気になっていたらしい、おじさんの仲間の人たちがワラワラとお猿の周りに集まってきて取り囲んだ。こ、怖いっ!!そこから、質問攻め!
「それは、どういう効果があるんですか?」「それってストロボに標準でついているんですか?」「レンズでケラれたりしません?」……etc。ここから、暫くちょっとしたストロボ撮影講習状態になってしまった。試し撮りとして観光客が歩いているのを撮ったものを作例として見せて「こんな感じで、光が硬くないように撮れます。あと、影が出にくいですね。それから、これは別売りで売っているのですが、こうやって装着します。この中には、ストロボ付属のオレンジのカラーフィルタを付けて、ぼんぼりの色に合わせてあります……」と答えていく。「ほぉ~、これはTTLを効かして撮っているんですか?」と更に続く。まあ、光量調整はあまりシビアに考えていないので、気持ち明るくなればいいかなという微妙なさじ加減で使っている旨を説明。一同、満足して帰っていかれましたが、ディフューザーってあまり知られていない?
そうこうして、お猿のプチストロボ撮影講習が終る頃、公民館に踊り手が集まってきた。
ここの「下新町」の浴衣の特徴が、この鮮やかな朱色ということ。それにしても、若いお姉さんが集まってくる。古き良き日本の女性を見た気がする!
まずは、一同が聞名寺の前まで行き、整列。通りを移動しながら踊る「町流し」が始まる。沿道の観光客の間を進んでいく。将来の踊り手と思われるちびっこも混ざって踊っていた。
先頭を先輩の踊り手が進み、その後ろを小中学生の踊り手が進んでいく。
列を撮る時は、是非ともぼんぼりの列も一緒に入れたい。この写真の悔やまれるのが、上の空間が広すぎたこと。もうちょっと先頭の女性の足元まで入れたかった。
背景の家が古めの家だったら、そこら辺を入れたものを撮りたい。女性は傘からチラリと口が見えるくらいが奥ゆかしい?
逆から撮ったのがコレ。奥に男衆が踊っているのが見える。
これは賛否両論があるだろうが、背後の紅白の横断幕は品がない気がする。黒と黄色の照明という組み合わせが踊り手を映えさせると思う。あと、ボカシ方がイマイチ。
撮っていて思ったのが、踊りを頭の中に叩き込んでおくことだということ。やっぱり絵になるポーズがあるので、そこでシャッターを切りたい。手を下にダラリと下ろしてしまう瞬間があったりして、そこで切ってしまうと「なんじゃこりゃ」となる。指先までピンと伸びて、肩から胸の高さに腕を上げているのがいいかもと思った。
ちなみに、踊りのサイトはコチラ。五箇山民謡とは違って、同じ動作を繰り返すことがないので、手をスッと伸ばすタイミングはいつかということは踊りを頭に入れておく必要がある。1回逃すと、更に1周待たねばならない。
町流しは、踊り手が列になって続いている感じが出ると良いと思う。しかし、最前列には整理の人が誘導棒で「はい、どいてください~」と道を確保しながら歩くので、こちらもそれに従って場所取りしつつ移動しなければならない。これは結構大変。
今回の町流しはこれくらい。公民館前に到着すると「輪踊り」が始まる。そのシリーズは次回に回しますが、1枚だけ紹介。
これは結構気に入った1枚。少々、腰の曲線が出ていないので、もうちょっと後ろに反った感じを撮りたかったが、まあ、今度は踊りを覚えて行こうと思う。今回、おわらをおわらっぽく撮る諸設定をまとめてみた。
○ホワイトバランス……色々と試してみたが、ぼんぼりの光源が白熱電球なので、赤カブリは消さずに行きたい。個人的には「曇天」がイメージにピッタリきた。ちなみに「白熱電球」にすると、見事なまでにカブリが取れて鮮明な写真になるが「幽玄さ」が全くなくなる。
○踊り手……ストロボ無しで撮るのも味があるが、ぼんぼりでうっすら照らされているようにストロボを当てたい。その為に、先に紹介したディフューザーを使用したい。中に、バウンスアダプターを使っている人がいたが、天井もないような屋外ではハッキリ言って無意味。ただ暗くしているだけで、発光面が狭いので硬いライティングになってしまう。そして、この踊り手の明るさを決めるのはストロボの数値のみ。個人的にはオートのままで露出調整ナシか-1EVが好みだった。また、ストロボの光とぼんぼりの色でミックス光源になるといけないので、ストロボの発光面に付属のオレンジ系のカラーフィルタを装着。これで、背景を照らすぼんぼりの色と、踊り手を照らすストロボの色が一致して自然になる。
○背景……ストロボを使用するので、普通なら背景は真っ暗くなるが、スローシンクロで背景を浮き出す。スローシンクロでも後幕発光にすることで、踊り手のブレが自然になる。ここで、露出とISO感度の設定がキモとなる。正直、踊り手の動きを止めてしまうのもいいが、流れるような踊りを表現するには、被写体ブレをわざと起こさせる必要がある。まず、背景の明るさを露出調整で設定し、好みの明るさまで上げていく。露出を上げるとシャッタースピードが遅くなるので、そのスピードが踊り手のブレとなる。遅すぎると手ブレも引き起こすし、踊り手のブレ幅が大きくなるので、どれくらいで止めるかはISO感度の設定になってくる。ぼんぼりがある場所とない場所では設定がガラリと変わるので注意したい。
今回は、この3項目がキモだった。「ストロボの光量」「カメラの露出調整」「ISO感度」を撮影場所によってコロコロと変えていく。この設定は実に面白くやってきました。踊り手と背景の露出を担当する項目が明確に分かれているので分かり易い。かなりオートでできるD300だが、こういう手作りのマニュアルさがあった撮影で堪能できました。
今度は、輪踊りですね。次回をお楽しみに!
一応、前夜祭は今月いっぱいは続きます。お猿の自宅から車で20分で行けてしまうので、仕事が終ってからでもいける距離。平日なんかは一層撮影しやすそうだ。是非、今月中に再挑戦して今回の反省を活かしたい。
ではでは。
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