デジイチ持ったらAdobeRGBモニタは欲しいよね!
お猿@おはようございます。
以前の記事で、お猿の職場にEIZOのカラーマネジメントモニタの「ColorEdge CG241W」が導入されたという話を書きました。
このモニタをお願いした理由は、「ColorEdge CG242Wの誘惑」という記事で、とりとめもなく書いたんですが、一番大きな理由はAdobeRGBをサポートしているということ。このCG241Wに関してはAdobeRGBの96%をカバーするという広色域モニタなのだ。
このAdobeRGBを表示できるモニタが欲しいという理由は、インプット側のデバイスであるデジタル一眼レフの大半がAdobeRGBの色空間をサポートしているし、アウトプット側のデバイスであるプリンタもAdobeRGBをサポートしているからなのだ。そうなったら、その間のワークフローもAdobeRGBワークフローにしたいわけで、モニタもAdobeRGBにしたいわけ。
お猿の持っているD300でも、「撮影メニュー」→「色空間」という項目で、
……というように、撮影データをAdobeRGBで記録するのかsRGBで記録するのかを選べるようになっている。これはお猿が初めて使ったデジイチである某C社のEOS kissDigitalでも同じことが言えた。まあ、コンデジでは大半がsRGBのみのサポートなのだが、流石にデジイチになってくると、そうも言えず、デフォルトではsRGBが選択されているもののAdobeRGBで撮影できるようになっているのだ。
ここで、色空間とかカラースペースといった概念が分からないとAdobeRGBとかsRGBと言っても分からないので、ちょっとだけ説明しますね。
色っていうのは、光がなければ見えないわけで、この光というのはX線とか電波といった電磁波の一種なので、波としての性質を持っているわけです。そんな中で人間の目に見える波長の電磁波を「可視光線」と言われます。この波長によって色が変わって見えてくるのですが、理科の実験で太陽の光をプリズムに通して分光して虹(スペクトル)を観察したように、一言で光と言っても様々な波長の光が混在しているわけです。
それで、その色を伝達するにしても色は心理的物理量なので、我々が感ずる「赤」と言っても、リンゴのような赤もあれば、血の様な赤もあるわけですね。じゃあ、どの赤なのさと言われるとハタと困ってしまう。
もし、メールや電話で伝えねばならないとなったらどうするか?「えーっと、リンゴでも紅玉の赤よりもちょっと黄色がかった赤で……」なんて言っても絶対に正確に伝わらない。では、そんな時にどうするか?数値で伝えるのが一番。でも、数値と言っても定義をしなければならないので、さまざまな定義付けがなされている。その世界基準となる「目」を決めているのがCIEという組織なのだが、その絶対値に対して、それぞれのデバイスが色空間を決めているのだ。
かなり乱暴な説明になってきたが、一言でRGBと言っても数え切れないほど定義ができる。極端な話、モニタが1000台あれば1000通りのRGBが存在すると言っても良い。ただ、これまた基準を作るということで、有名なところでAdobeRGBとsRGBが存在する。
「AdobeRGBでは可視光のこの範囲を定義します」「sRGBでは可視光のこの範囲を定義します」とそれぞれに色空間が異なってくる。一般的にRGBは最終的に8bitで使われると思うので、それぞれの要素で256階調として話を進めましょう。そうなってくると、AdobeRGBの(R,G,B)=(255,0,0)という“レッド”とsRGBの(R,G,B)=(255,0,0)で表現される“レッド”が存在することになる。しかし、世界基準の目からすれば、同じ(R,G,B)=(255,0,0)で表現されるレッドは、
……というように、sRGBの(255,0,0)はAdobeRGBの(255,0,0)ではなく(200,0,0)ぐらいの色と言ったように丸っきり別の色を指していることになってしまう。だから、デジタルフォトのRGBデータを運用するには必ずICCプロファイルを埋め込むように言われているのだが、業界最大手の某ストックフォトを利用した際に、プロファイルが埋め込まれておらず、「これはどっちの色ですか?」と電話で問い正したことがあるが、一体何のことを聞かれているのか分からないような対応だった。そんなRGBワークフローの常識も弁えていないストックフォトが多いことに驚かざるを得ないが、供給側がそういうレベルということは、使う側もデジタルフォトの扱い方がまだまだ分かっていないのだと思う今日この頃だ。
一般的にAdobeRGBよりもsRGBの色空間は狭いので、AdobeRGBで表現されるものをsRGBで表現すると彩度が落ちて見えることが多い。つまり、AdobeRGBは同じビット数であってもsRGBよりも広い範囲の色を表現できることになるのだ。
その辺をAdobeRGBとsRGBのプロファイルを見比べてみたいと思う。MacOSXの「ColorSync ユーティリティ」を使ってプロファイルのカラースペースを確認してみよう。
まずは、LabにてAdobeRGBに対するsRGBの範囲を見てみたい。
色“空間”と言われるように、立体で表現されるので、2つの角度からチェックしてみた。半透明な白い立体がAdobeRGBで、その内側にあるカラーの立体がsRGBだ。明らかにAdobeRGBがsRGBを包含していて、圧倒的な色域の広さを実感できる。特に、グリーンやオレンジ系の色をより広く表現できるのがAdobeRGBであり、その辺の色は全く表現できずに切り捨ててしまうのがsRGBということがよく分かる。
次にYxy上でグリーン部分を重点的に見てみた。
この図では黒いラインが可視光になる。その上にAdobeRGBとsRGBの色空間が再現されているのだが、やはりグリーンやオレンジ系にAdobeRGBは強みを持っているのが分かる。このグリーンの色域はちょうど、エメラルドグリーンの範囲であり、オレンジは人の肌に近いものがあるそうな。
では、それぞれのモードで実際に撮り比べてみました。
まず、これがAdobeRGB。
そして、次がsRGBである。
実際にWeb上で閲覧する際は、全員の方がAdobeRGBモニタを使っているわけじゃないし、シェアNo1なIEがICCプロファイルに対応していないので、本当は比較できないのですが、sRGB上に両者をマッピングし直してみたので、その差のイメージだけを感じ取っていただければありがたい。サンプルを撮り終わって後悔したのが、両プロファイルの大きな差であるグリーンやオレンジ域の要素があまりないことだ。まあ、それでもこれでチェックしてみたい。
まずは、ミッキー側の首の蝶ネクタイ付近ですね。
AdobeRGB側の蝶ネクタイの明るい部分の彩度が高めであることと、赤い服の彩度も高めになっている。若干色飽和っぽく見えるが、Web用になっているのでカンベンしてもらいたい。本当は、肌の色もいい感じだったのだが、そこまで再現はできずに残念!
それと、グリーン域ということで、ミニー側に紙で作った木を持たせたのだが、あまり差が出ず。むしろ、ミッキー前の木の人形に差が出たので、そこを見ていただきたい。
分かるだろうか?AdobeRGB側の緑の帽子の彩度が高く、後ろのシンバルを持った人形の赤い帽子にも明確な差が出ている。
こういうことで、差の出にくいサンプルを作ってしまって申し訳ない。沖縄の海とか、春の新緑。あと、色とりどりのサラダとか、各国の鮮やかな民族衣装。そして、人の肌などが極端に差の出るところだ。風景写真やポートレートは勿論、ブツ撮りなんかでもAdobeRGBで撮るメリットは非常に大きい。
ここまで書いてみると「彩度が高いのがAdobeRGB」ということで、俗に「ハデハデ病」と言われる、極端に派手な色彩にレタッチしたがる人種のように思われるかもしれないが、そうではない。実際に高彩度がある被写体を撮っているのに、表現できないために狭い領域に閉じ込めて正確な色を記録できないということになってしまうのだ。つまり、素材の特性を十分に表現できないということになる。
では、そのAdobeRGBカバー率96%の「ColorEdge CG241W」とは、先ほどの「AdobeRGB vs sRGB」の差と比べると、どれ程の差があるのだろうか?CG241Wで印刷用として用意されている印刷用の一般的な設定と比較した。5000Kのγ=1.8、輝度80cdで作成したものだ。
まず、Labにて先ほどと同じ角度からチェックしてみた。半透明の白い立体がAdobeRGBで、色の付いた立体がColorEdge CG241Wだ。
完全にAdobeRGBを包含はできないものの、sRGB対応ですというモニタと比べると天地雲泥の差だ。
更に、sRGBとの比較ではゴッソリ抜けてしまっていたグリーン部分をYxy上で重点的にチェックしてみた。
これはスゴ過ぎます。ColorEdge CG241Wの方が広いのではないだろうかという部分もある。
このAdobeRGBを再現できるモニタは、出始めた頃はCRTでもべらぼうに高かったが、今はLCDで再現できて、かなり安くなってきている。しかも、ワイド液晶と来たものだ。パレット類を置いてレタッチをするには非常に便利が良い。
EIZOからは、1月に発売されるモニタも含めると、
- ColorEdge CG222W
…22型ワイド、AdobeRGBカバー率92%
- ColorEdge CG241W
…24.1型ワイド、AdobeRGBカバー率96%
- ColorEdge CG242W
…24.1型ワイド、AdobeRGBカバー率97%
- ColorEdge CG301W
…29.8型ワイド、AdobeRGBカバー率97%
……という4種類のColorEdgeがリリースされている。さすがにプロユースということもあって家電量販店では扱っていないことが多いので、もっぱらEIZOの直販サイト「EIZOダイレクト」での購入になると思うが、写真を仕事にしている人や、アマチュアでもクオリティの高い作品を作りたい人は22型のCG222Wでもいいので手にしていただきたい。
キャリブレーションで、ハードウェアキャリブレーションにこだわらなければ、同じEIZOのFlexScanシリーズでもAdobeRGBをカバーしているモデルはある。
- FlexScan SX3031W-H
…29.8型ワイド、AdobeRGBカバー率97%
- FlexScan SX2761W
…27型ワイド、AdobeRGBカバー率95%
- FlexScan SX2461W
…24.1型ワイド、AdobeRGBカバー率96%
……といった具合だ。
ただ、やっぱりColorEdgeにするメリットというものがあるので、その辺は後日に述べたいと思う。
ではでは。
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コメント
しっかりと、基準を据えての色管理はデジタルでは重要ですね。
しかしデジため写真の基本としてはsRGBのほうがメインとなりますね。
まずsRGBでしっかりとしたカラーマネージメント法を習得してから
AdobeRGBの運用しに入った方が手探りで無くなり有効かと。
たしかに、AdobeRGBの方が色域が広く情報量も大きくなりますが
しっかりと見極めるためにはしっかりしたカラーマネージメントと表示
できるモニターは必須。
本文の色域説明の図は全体的に広いように誤解されますよ。
広いのは青や緑の方向であり赤方向は差がわずかで見た目の変化
は少ないものですよ。
一般的に使うのにはsRGBで充分、もともとsRGBは国際電気標準会議
(IEC) が定めた国際標準規格であり、一般的なモニタ、プリンタ、デジタ
ルカメラなどではこの規格に準拠しており、互いの機器をsRGBに則っ
た色調整を行なう事で、入力時と出力時の色の差異を少なくする事が
可能になるものですから。カラーマネージメントの基本とゆえる物です。
AdobeRGBはAdobe Systemsによって提唱された色空間の定義ですね、
sRGBよりも遥かに広い(特に緑が広い)RGB色再現領域を持っているの
で、印刷原稿にする時にYMCK変換で色転びが少ないように作られたも
のだと、私は理解してます。
みんぽすさんみたいにしっかりと機材を揃えられて取り組まれる方は
ごくわずかですよ・・・・
カラーマネージメントは終わりの無いマラソン・・・常に摺り合わせがする
事で安定させる物ですから,許容範囲の無いデジタルでは使う人間側の
「努力」は必要なものですね・・・どんどん便利とゆうお題目で我々人が
機械に使われている気がしてならないですね・・・
三角の色域の広さの説明図は誤解を招くので注意した方が良いかと。
投稿: 水準器 | 2008年12月13日 (土) 13時55分
いつかは、AdobeRGB環境を整えたいと多いな夢をもっているべあまんです。
しかっーし!猿師匠のありがたいブログを拝見しても40パーセント?いや30パーセント程度しか理解できずにいます。
でも頑張って、このシリーズを読破だけは勤めます。
ところで、いつかはAdobeRGB環境を目指してる自分ですが、今はデジカメの設定は、sRGBでやっております。
どちらで取りためておくのが賢いのでしょうか?
プリンターは猿どのをまねして、最近PX-5500を導入いたしました。
投稿: べあまんさん | 2008年12月14日 (日) 14時57分
○水準器さん、ご無沙汰しています!
!
いつも、鋭いツッコミありがとうございます
う〜ん、確かにガモットの図はいい加減に作りすぎましたね。普通は、上が緑だし、いい加減過ぎる……。まあ、色空間の違いで変わっちゃうよっていうのを相当デフォルメして眠い中作ったんでご容赦をっ!!
sRGBとAdobeRGBに関しては、かなり激しい論争がなされてきましたが、DTP用途からスタートしたお猿的には、やっぱりAdobeRGBに落ち着いてしまいます。現にそういう流れがあってからかAdobeRGB対応機器も出てきていますし、インプット側のデジカメでも一眼レフクラスなら大抵はAdobeRGBを選択できるようになっていますしね。
次の記事でも書きましたが、最近はオフセット印刷でも色域を広げて印刷っていうのが珍しくなくなってきましたし、インクジェットプリンタでもAdobeRGB対応が珍しくなくなってきていますので、今後はそういう流れになっていくのではないかと勝手に推測しています(っていうか希望ですね)。
そうなってから、過去の資産がsRGBというのではあまりに勿体ないので、AdobeRGB推奨っていうのがお猿の思想です。まあ、RAWで撮れば問題ないんでしょうけど。
デジタルが普及し、これだけ色々なデバイスを渡り歩くデータですので、今後はカラマネはますます必須かと思います。上を見ればキリがないですが、致し方ないですね。頑張ります。
○べあまんさん、コメントありがとうございます!
恐らく理解できないというのは、お猿が半分睡眠状態で書いているからじゃないでしょうか?なんせ書いていて支離滅裂になっていますので
。分かりやすく書きますね!
あと、これは好みかと思いますが、お猿の場合はsRGB環境であっても、AdobeRGBで撮っていました。それで、sRGBで開く時にマッピングし直して使うというやり方です。くすんじゃうけど、仕方ないですよね。まあ、一番安全なのはsRGBで撮ることでしょうけど、いずれAdobeRGBっていうのなら、AdobeRGBを推奨したい今日この頃です。
それから、PX-5500購入おめでとうございます。かつて持っていたプリンタは何だったんだというプリンタですよね。ガンガンプリントしていきましょう!!
投稿: フォトグラファー猿 | 2008年12月16日 (火) 12時54分