DTP前提ならばAdobeRGBモニタだよね!
お猿@おはようございます。
なんやかんやと12月も中盤にさしかかって、年賀状をまだ買っていないということもあって“師走”に拍車がかかってきてかなりピンチです。年末年始には印刷所も休みに入ってしまうので、締め切りも早めということもあって、またまたピンチです
。そんな中、D700
の3万円キャッシュバックキャンペーン終了まで約1ヶ月ということで、今なら深夜価格で実質20万円以下なので、焦りに焦っております
。そんな余裕のない状態が続いていてブログ更新している場合じゃないので、
今日もブログを更新したいと思うよっ!
そんなワケで、お猿の職場に待望のAdobeRGBカバー率96%のカラマネモニタ「ColorEdge CG241W」が導入されたので、たて続けにレビュー記事を書いております。
前回は「デジイチ持ったらAdobeRGBモニタは欲しいよね!」ということで、細かいことは抜きにして、かなりはしょって乱暴に書きなぐっておきました。しかし、ただでさえAdobeRGBかsRGBかでフォトグラファー、デザイナー、印刷屋で見解が分かれているっていうのに、かなり勇気要ることを書いたなーって今さらながらに思います。半分寝ながらだと恐れるものは何もないですな。そんなワケで、今回もお猿の独断と偏見と勢いで書きなぐっていきたいと思います。
改めて、“フォトグラファー猿”というカメラメインな名前を名乗っておりますが、実のところはDTPオペレーターでございまして、画像処理が本業だったりします。RGB to CMYKと処理を行っているうちに、印刷に適した写真ってのを気にするようになって、いつの間にやら志願して自分で撮るようになりました。
そんなワケで、最終的にはCMYKの網点で色を認識しているのですが、デジカメ世代ならやっぱりRGBレタッチの必要性に駆られたんですね。そうなると、標準カラースペースをsRGBにするかAdobeRGBにするかで大いに揉める事になるんです。さて、最終ターゲットをプロセス4色のCMYKとした時にsRGBで行くべきか、AdobeRGBにすべきか。
……で結論的にAdobeRGBという見解になりまして、こんな記事を書いています。
スキャナなりデジカメなりといった「インプット」デバイスから、インクジェットプリンタなりオフセット印刷機なりといった「アウトプット」デバイスまで、考慮してみるとターゲットがCMYK印刷なのですが、さて、そのCMYK印刷でできるものを途中のワークフローでシミュレーションできるのかということが問題となってきます。
お猿の現場ではオフ輪ではなく、もっぱら4色印刷の枚葉印刷機なので、基本的にCMYK分解は「Japan Color 2001 Coated」のお世話になっている。まずは、世間的に広く出回っているsRGB対応機器で、これをシミュレートできるか否かをColorSyncユーティリティで比較してみたい。
まずは、Labにて2つの角度から観察してみた。半透明な白の立体がsRGBで色のついた立体がCMYKの「Japan Color 2001 Coated」だ。
RGBデータをCMYK変換すると、正直なところかなりくすんで感じられる。あの鮮やかな青空はどこへ行った?新緑はどこへ行った?というのは、この変換をしたことがある人ならば少なからずあるだろう。では、sRGBよりCMYKは狭いのかというと一概にそうとも言い難い。ご覧の通り、sRGBが広い白の空間も多いが、その裏にかなりの範囲でCMYKがはみ出しているのだ。つまり、sRGBでは表現できない色域っていうこと。
次に、Yxyで見てみた。
う~ん、やっぱり同じ印象ですね。
ここで、sRGB派の方の最大の理由は早い話「事故が起きない」ということだったと覚えている。暫く前までは、インプットはさておき、途中からアウトプットまでのワークフローで大事なモニタがsRGB対応ばかりであったということと、最終的なアウトプットのインクジェットプリンタまでもがsRGB止まりだったということ。簡易色校正のプルーフがそれで制限されてしまうのだ。
そんな環境に於いて、インプットばかりが先行してAdobeRGBでスタートしようものなら、カラマネの分からない人がいじれば、AdobeRGBをsRGBで開いてしまって色が転びまくるだろうし、分かる人がいじっていてもAdobeRGBのままで運用していてもsRGBモニタやプルーフでは再現できずに、最終的になオフセット印刷が仕上がって違いに驚くということになりかねない。現状を考えたらsRGBが安全なのはごもっともと言えよう。
しかし、APA(アパグループではない、「社団法人 日本広告写真家協会」のこと)が、2004年に発行した「印刷入稿のための RGB画像運用ガイドブック 2004年版」を勉強会で頂いたときに、かなり驚いた。
あ、ちなみにこれはAPAのダウンロードサイトからPDFデータで無料でダウンロードできるので見ていただきたい。ちなみに最新は「RGBワークフローガイド 2007」というものだが、いずれにせよRGBワークフローを構築しようとする人は必見の書と言ってもいいと思う。
この中に、AdobeRGBとsRGBで撮影したサンプルを、それぞれプロセス4色印刷で印刷した実例が載っている。これは、プロセス4色印刷してこそ意味があるのでPDFでは省略されているのだが、実はこれがスゴイのだ。それを試しに撮ってみた。
まあ、最終的にこのブログ上で見られるのはAdobeRGBでもなければCMYKでもないので何とも言えないのだが、見開きのページを1枚で撮影してるために相対的な違いは維持されているので、差分くらいは判断していただけると思う。
左がAdobeRGBで撮影したもので、右がsRGBで撮影したものだ。共にCMYKのプロセス4色印刷で刷ったものだが、明らかに仕上がりが違うのが分かると思う。先ほどのsRGBとの比較の空間で大きくはみ出していたブルーからグリーン域が全く違うのだ。sRGBでは空の色がややくすみがちだし海の微妙なトーンが再現し切れていない。更に、写真の下のカラーバーを見ていただくとsRGBのグリーン域は差がなくなりつつあるのだ。
事故を防ぐためにsRGBで撮影して運用することで、アウトプットまで完全にモニタでシミュレートできるため予期していない色が出ちゃったというトラブルはなくなると思うが、「帽子に合わせて頭を削っていていいのか」という疑問がお猿にはあった。やっぱりCMYKで表現できるものがあるならば、切り捨てずに素材の色を可能な限り極限まで再現しようよ、それこそ職人っちゅうもんでしょ、と思ったんですね。
じゃあ、AdobeRGBならCMYKの「Japan Color 2001 coated」はどこまで再現できるのかということだが、同じくLabで2つの角度で比較してみた。半透明の白い立体がAdobeRGBで色の立体が「Japan Color 2001 coated」だ。
どうだろう?立体なので裏側に回れば何かが見えるかもしれないが、左の図でsRGBではグリーン域がごっそりハミ出ていたことを思えば、かなりカバーできているし、右の図でも、グリーンからブルー、マゼンダ域の表面がうっすらはみ出ているくらいだ。これはかなり再現できていると言えるだろう。
次にYxyでチェックしてみた。
これまたスゴイカバー率じゃないだろうか。sRGBではグリーンとブルー域の山の5合目くらいまではみ出ていたのが、こっちでは2合目くらいまでに留まっているし、それも、表面がうっすら程度だ。この差が、先ほどの空や海の色に出たと言えると思う。
これで、sRGBよりはAdobeRGBがCMYKカバー率は広いことが分かるので、AdobeRGBワークフローが事故がいため、確立できればいいのだが、さて、機材的な問題はどうかとなるが、先行してプルーフのインクジェットプリンタはAdobeRGB対応危機はA3ノビ以上のプリンタなら大抵はカバーするようになった。しかも、これはそんなに高価でもないし、職場に1台あれば大勢で共有できるものでもある。
しかし、製作の大半を占めるデザインや組版、製版といったプロセスに於いてはモニタが重要となってくるが、そのモニタは1人につき1台。AdobeRGBモニタなんて登場した頃は色の奥行きもあったがお値段の奥行きもあって非常に高嶺の花だったのだ。それでも、勉強会などで某N社が持ってきた見本機を拝見した時には、隣にあったsRGBモニタが見劣りするほど感動したのを覚えている。そんな、AdobeRGBモニタもCRTからLCD主体に変遷し、LCDだって20型以上でも測色器付きで20万以下で手に入るご時世だ。しかも、ワイド液晶ということになったら作業効率も良くなって鬼に金棒ではないか!
そんなワケで、お猿の職場の「ColorEdge CG241W」なのだが、コイツはAdobeRGBカバー率96%を謳っておるが、実際はどうなのかチェックしてみたい。
まずはLabで、2つの角度からチェック。半透明の白の立体がCG241Wで、色の立体がCMYKの「Japan Color 2001 coated」だ。
流石にAdobeRGBをほぼカバーしているだけあってハミ出す量はAdobeRGBと大して変わらない。これは誤差かもしれないがブルー域のハミ出し量がAdobeRGBのそれよりも少ないようだ。Yxyでチェックしてみても、
……ということで、こっちになるとブルー域のはみ出しが1合目くらいまでになっているようだ。これはスゴイ。AdobeRGBカバー率よりもJapan Color 2001 coatedカバー率と言った方が良いかもしれぬ。
さて、ここに来て更にAdobeRGBが必要と思われるものが出てきた。DTP以前は製版職人さんの手によって完全アナログ工程によってフィルムが出来上がり、そこから焼付け機でPS版に焼き付けて刷版を作成していた。線数も175lpiが限度だ。しかし、そこからDTPの登場となりイメージセッターでフィルムが作られるようになったが、PS版への焼付けは手動だったりした。それは次第にCTPの登場でフィルムレスとなり、その名の通りコンピュータからプレート(版)へとダイレクトに焼き付けられることとなった。この事でそれまでは1%の網点なんぞ飛んで消えておったが忠実に再現されることとなり、より高精度な網点再現が可能となった。
このことで、それまでは網点の大小によって濃度を表現してきたAMスクリーンから、網点の密度によって濃度を表現するFMスクリーンが可能となった。AMスクリーンは規則的に網点が並ぶために、CMKを30度ずつ回転させて、目立たないYを15度回転させて作るという方式を取ってもロゼッタパターンと呼ばれるモアレが発生している。これ以上の色を追加することは確実にひどいモアレを作ることになった。しかし、FMスクリーンで総インキ量の問題などをクリアすれば4色以上にも対応できる。これに175lpi以上の細密なAMスクリーンも組み合わせてモアレを目立たせずに印刷が可能となった。
先ほどのAPAの冊子のサンプルは観音開きになっており、そこを開くと同じAdobeRGBとsRGBのサンプルフォトがプロセス4色印刷ではなく、CMYKにO(オレンジ)G(グリーン)を加えて6色で印刷するPANTONE社のヘキサクローム印刷によって仕上げられたサンプルが掲載されている。
今度はさっきとは逆で左がsRGBで右がAdobeRGBとなっている。やっぱり、これで見るとWebの色なのでハッキリと分からないが、それでも空の色、海の色、人肌の色のヌケ具合が全く違うのだ。下のカラーバーで言うと、左のマゼンタ域、右のグリーン域、オレンジ域がsRGBでは2つのパッチがくっついて差が出ていないのに対して、AdobeRGBでは明確に区別ができる。つまり、本来は存在している色を忠実に再現していることになるし、最終ターゲットのオフセット印刷でも再現できる域に達している。
ただ、このヘキサクロームは、その名が意味するように6色印刷なので、印刷機もそれに対応する必要があるし、インクも指定のものを使わなければならない。プロファイルも特性のものを使って変換するので、そう簡単にはいかない。従って、プロファイルの比較はできなかったが、4色であってもガモットを広げる工夫はなされている。
それが、東洋インキのKaleido(カレイド)という高演色枚葉プロセスインキである。これは、CMYKという色数は一緒なのだが、それぞれのインキ組成を変えて高演色化を実現しているというものだ。ちなみに下の写真は、東洋インキより貰ったサンプルの簡易カラーチャート。
これに関しては従来どおりの4色印刷機で間に合い、Kaleido用のプロファイルを適用すればPhotoshopでも分解できる。そのプロファイルも配布されているので、従来の「Japan Color 2001 coated」と比較してみた。
まずは、Labにて比較。半透明の白い立体が「Japan Color 2001 coated」で、色の立体が「Kaleido」だ。
さすがに、4色のインキ組成を変化させているということもあって、RGBとCMYKというような劇的な変化はないものの地味に違いが現れている。一長一短がある中で、特定の箇所が高演色になっている。先ほどのカラーチャートに付属してきた売り文句では「従来インキに比べ黄、紅、藍の色相が高鮮明になっており、2次、3次色の発色性が向上しています」とのこと。黄部分はどうかな……と思うが、紅、藍の部分では確かにKaleidoが強い。
次はYxyにて見てみる。
う~ん、確かに右半分の紅~藍にかけては白い山が全く見当たらない。その分、左は白が勝っているように思うので、全体的に色相が紅~藍にシフトしているように思うが、総合力ではやっぱりKaleidoだと思う。
まあ、そんなこんなで従来の4色環境であったとしても、特殊なプロファイルを適用し、特定のインキを使えば高演色な印刷が可能となる。
印刷業界では、印刷対象は自然界を撮った写真に限らず、CGによるものも対象内だ。それは基本的にRGBで表現されるものなので、極力色数は落としたくないものということで、シビアになってきている。ますます、生き残っていく為にはモニタの投資も大事になってきたと思う。
かなり、業界ネタで熱くなってしまいましたが、いい加減に眠くなってきたのでそろそろ寝ます。
ではでは。
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この記事へのコメントは終了しました。
コメント
「ColorEdge CG241W」触ってみたいですね~。
なんだかどんどんカラーエッジが欲しくなってきました。
少しがまんして、FlexScan S2432Wを購入しようと家族会議を持ちましたが、家のテレビがブラウン管で、薄型化をガンマンしているところ、
突然、PC用のテレビだけ高機能化を希望しても無理な話でした。
とほほです。
投稿: べあまんさん | 2008年12月14日 (日) 09時47分
べあまんさん、コメントありがとうございます。
ColorEdge良いですよ〜。やっぱりAdobeRGBができるのはFlexScanもありますが、画質が全然違います。
知人で、PCをテレビ変わりに使っている人がありますので、そういう手もありますよ。家族がテレビを見ている間は、何も出来ませんが……。
職場の稟議より大変そうですね。お互い頑張っていきましょう!!
投稿: フォトグラファー猿 | 2008年12月16日 (火) 12時57分